低酸素トレーニングはいつ行うのが効果的か?

11月の「高地・低酸素トレーニング国際シンポジウム」に参加して、低酸素トレーニングについての考察2回目。

今回は低酸素トレーニングを行うタイミングについて考えてみたいと思います。

スポーツ選手が標高の高いところで行う「高地トレーニング」はだいたい年に1回~4回程度。1回あたりの合宿は2~3週間。もっと短い場合もあります。
物理的に遠い、費用がかかる等の理由もありますが、高地トレーニングは大会前などのポイントで行う方がより効果があがると考えられています。

理由としては、前回の投稿でも書いたように、長時間の高地滞在では、選手のコンディション管理が難しい、練習強度があげられないというデメリットもあり、また高地トレーニングで向上する酸素摂取能力等の向上についても、個人差はあるものの、滞在すればするほど上がっていくわけではなく、伸び率は徐々に少なくなります。練習内容にもよりますが、メリットとデメリットのバランスを考えた場合やはり長くても数週間という単位になるケースが多いのです。

高地トレーニングを行うタイミングとして、心肺機能・酸素摂取能力を上げて、大会に臨むパターンと、さらに高いレベルの練習をするために高地トレーニングをするパターンがあります。トップアスリートの高地合宿は、年間の大会や練習プランの中に組み込んで計画的に行われます。

それでは週に1時間から2時間しか行わない、低酸素室でのトレーニングの場合はどうでしょうか?

低酸素室でのトレーニングの考え方も基本的には同じですが、主に2通りのやり方があると思います。

1つは通常のトレーニングとして、低酸素トレーニングを取り入れる方法です。低酸素環境下では、短時間で、筋肉、関節に少ない負荷で心肺等には負荷をかけられます。普段のトレーニングの中の一つを低酸素トレーニングに置き換えるという考え方で、日常的に行い、頻度もどのくらいでも構いませんが、頻度が低ければ低酸素環境下で期待される持久力・酸素摂取能力の向上の効果は薄くなります。また、低酸素環境下では、運動強度は落ちるため、低酸素トレーニング以外の練習が不可欠になります。

持久力、酸素摂取能力の向上を期待するのであれば、少なくても週1回。もしくはそれ以上の頻度で継続的にトレーニングを行うことが必要です。できるだけ長時間低酸素環境下でトレーニングすることで、低酸素環境下でおこる体内変化を促し、持久力アップにつなげていきます。

(初めて低酸素トレーニングを行う場合は、適応力の個人差があるので、高頻度でいきなり行うよりは、事前に数回慣らしておく方がよいと思います。)

この方法の場合、身体には強い刺激が加わり、呼吸が楽になる等の効果を早めに感じることができると思います。しかし、長く続けると身体がその刺激に慣れ一定のところからは効果があまり変わらなくなってきます。
また、先に述べたように低酸素環境下では運動強度は下がるため、低酸素トレーニングの回数を増やせば、その分、全体のトレーニングの質は落ちてしまう可能性があるため、この方法の場合は期間を区切って行うことが望ましいと考えます。

このように一定期間低酸素トレーニングを続けて、効果が表れてきたら、大会に臨む。または、さらに負荷、質の高い練習を行い、パフォーマンスを上げる。というようにつなげていくことができます。
大会まえだけの低酸素トレーニングも効果が期待できます。

・目標とする大会
・競技内容
・普段の練習スケジュールや生活パターン
・個々の低酸素への適応度

などを考慮しながら、いつ、どのタイミングで、どのくらいの頻度で低酸素トレーニングを入れるのか。計画的に行うことがより効果的な利用方法になると考えられます。

関連記事

  1. 低酸素トレーニングの効果-呼吸が楽になる

  2. 富士山登山と低酸素トレーニング(高地順応)

  3. 低酸素トレーニングは運動しない人、運動ビギナーにもおすすめの…

  4. 週一回の低酸素トレーニングの効果・中学生への導入

  5. 2019年ノーベル医学生理学賞は「細胞の低酸素応答の仕組みの…

  6. 低酸素と健康増進