低酸素と健康増進

11月に行われた 高地・低酸素国際シンポジウムの大きなテーマの一つが低酸素の健康増進のための利用研究でした。

人の身体が低酸素環境下に置かれると、さまざまな反応が起こり始めます。
すぐに起こる反応もあれば、長時間いることで起こる反応もあります。
それらの反応の中には、スポーツパフォーマンスの向上だけでなく、健康や病気の予防改善に役立つとされるものもあり、今多くの研究者がその効果について検証を重ねています。

現段階では、低酸素環境下での軽度な運動でも、継続することで

●脂質代謝の向上(主に運動後)
●糖代謝の向上(主に運動中)
●血管の柔らかさを維持する。血圧を下げる。
●食欲増進ホルモンの減少

などの効果が期待できます。
高地住民には、 二型糖尿病、虚血性心疾患、高血圧などの発症率の少ないこと も報告されており、これらの効果を裏付けています。

また、低酸素環境下の運動は、通常環境で同じ強度、時間の運動をするよりおおよそ2割から3割多い運動量になるという研究論文も発表されています。(一部の低酸素トレーニングにおける広告で「30分で2時間の運動量」というものが見られますが、これに関しては何のエビデンスもありません。)

これらのことから、低酸素での運動を継続することは、メタボリックシンドロームをはじめとする成人病の予防・改善にも役立つと考えられています。特に今まで運動習慣があまりない人、強度の高い運動ができない人にとって、低酸素環境下の軽度な運動は、生活習慣の改善のスタートには適しています。

しかしながら、一番のポイントは定期的に継続した運動が必要で、1日30分であれば週2回~3回の運動が効果的とされています。間が空きすぎると効果は薄くなってしまいます。

また、成人病予防・改善には、食生活の改善については言うまでもなく、低酸素トレーニングの効果は食生活で簡単に打ち消されてしまいます。しかし、食生活を改善しつつ、低酸素トレーニングを取り入れることでさらなる改善も見込まれます。

筋肉などには少ない負荷で、体内の負荷は高められるため、
体力がない人が少しづつ体力アップをする場合。
怪我などからのリハビリ。(状態によっては適さない場合もあります。)
にも利用できます。

低酸素と健康に関してはまだまだ多くの研究がなされており今後も低酸素を使った予防治療ができる分野が多く発見されていくことと思います。



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